今さら聞けない看護技術!:安全な吸引圧は?最新の根拠を解説!

看護技術

「看護師さん、○○さんむせちゃったから吸引してくださーい。」
「はい!(あれ、吸引圧ってどれくらいだったっけ…?)」

急に吸引が必要になると、焦ったり不安になりますよね。

こんにちは、ぽんこつナースゆかです!
今さらですが適切な吸引圧について調べてみました。

看護師によって吸引圧が違う!?

学校で15~20kPaと習い、それを守り続けていましたが、最近、職場の吸引機が20kPa以上に設定される様になりました。最近入職された、経験豊富な方が設定していたので、訪ねてみました。

「20kPaじゃ全然吸えなくない?私は指導者研修の時に24kPaって習ったよ?」とのこと。
(24!?聞いたことない!)とびっくり。しかし後日持ってきてくれた研修資料に、確かに24kPaと書かれていました。

医療は変わっていくものです。
24kPaの理由を知りたかったので調査してみました!

成人の吸引圧は200mmHg(≒26.7kPa)!

結論から言うと、成人の吸引圧は200mmHg(≒26.7kPa)ということがわかりました。
最新の研究とガイドラインから検証しました。

では、その研究とガイドラインの内容を確認してみましょう!

200mmHg(≒26.7kPa)以下で呼吸・循環動態への影響を抑えられる!

気管吸引ガイドラインに載っていた研究内容を抜粋して載せていきます。
呼吸・循環動態の観点からの研究です。

〈気管吸引ガイドライン2023〔改訂第3版〕(成人で人工気道を有する患者のための)〉100mmHgと200mmHgの陰圧で吸引を行う2群に無作為に割り付け、動脈血酸素飽
和度(SpO2)と心拍数値に及ぼす影響を調査した。吸引前、吸引中、吸引後5分および20分の平均SpO2および心拍数に、各群で有意差が認められたが(p<0.05)、2群間では認められなかった(p>0.05)。ICU入院患者に対す る安全でリスクの少ない陰圧吸引として、200mmHgの 陰圧吸引は適用可能であることが明らかにされた。

吸引圧を200mmHg よりさらに下げても、吸引後の酸素飽和度の低下が抑えられる可能性はないことが示唆された。無気肺の形成に 関連すると考えられる呼吸生理学的パラメータは、吸引圧の違いにより差がなかった。

吸引圧200~250mmHgに制限することを組み入れた気管吸引に関するバンドルを採用した前後の期間で合併症を比較した研究では、バンドルなしの期間(気管吸引圧400mmHg程度)と比較して、気管吸引によって生じる有害事象(低酸素、気道出血、低血圧)を有意に減少させた。

kikanguideline2023.pdf (umin.ac.jp)

なにやらとても難しそうです。

つまり、この研究から
●200mmHg(≒26.7kPa)でも、もっと弱い吸引圧でも、呼吸・循環に与える影響は同じ。
 なので、200mmHg(≒26.7kPa)は吸引圧として安全で適切である。

●吸引圧を200~250mmHgに制限すると、
 吸引圧400mmHgと比べて有害事象(低酸素、気道出血、低血圧)が減少する。

ということが分かったのです。

225mmHg(=30kPa)で粘膜損傷を回避できる!

また、粘膜損傷の観点からの研究も載せます。

〈安全で効果的な気管内吸引圧の実証的研究〉
研究Ⅲでは,孔圧183mmHgと400mmHgで基底細胞が検出されたことから180mmHg以上は重篤な粘膜損傷になる危険な孔圧であると判断した.孔圧127mmHg以下では,基底細胞は検出されなかった.Jung(1976)の研究と筆者らの研究(2009)から,孔圧100mmHgは,重篤な粘膜損傷を回避できる孔圧であると考えられた.孔圧100mmHg以下の設定圧は135~ 400mmHgの範囲にあり,その代表値である中央値は225mmHgであった.気管内吸引を実施する際は,本研究で得られた孔圧100mmHg以下とするために,設定圧を225mmHgとし,吸引器圧200mmHgを超えないように吸引することが望ましいと考えられた.臨床において,この設定圧で吸引した場合は,場面での吸引回数と要した時間の状況,吸引実施者からの評価から,設定圧225mmHgは効果的な吸引圧であると考えられた.

http://(Microsoft Word – \201y\225\275\226\354\217\272\225F\201z2013\224N\230_\216|\217W\226{\225\266.doc)

どうやら、機械の設定圧と、吸引チューブの孔の圧力(孔圧)は違うようですね!
知らない事ばかりです。

そして、この研究から
●吸引チューブの孔の圧が180mmHg以上だと重篤な粘膜損傷になる危険な孔圧である。

●吸引チューブの孔の圧が100mmHg以下だと重篤な粘膜損傷を回避できる

●孔圧を100mmHg以下にするためには、設定圧を225mmHg(=30kPa)とする

と言うことが分かったのです。

まとめ

今回は、吸引圧はどれくらいが適切なのかを検証してみました!

結果
●200mmHg(≒26.7kPa)以下で呼吸・循環動態への影響を抑えられること
●225mmHg(=30kPa)で粘膜損傷を回避できること

が判明しました。

225mmHgで呼吸・循環動態の調査はされていないため
吸引圧は200mmHg(≒26.7kPa)以下が安全と言うことがわかりますね!

(当初の24kPaの理由は謎のままですが…。)

以上、参考になりましたでしょうか?
対象者の方たちの苦痛を最小限に、吸引ができたらいいですね!

毎日がんばっている方のヒントになれたら嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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